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2026年2月16日
一般財団法人東海技術センター (TTC) は、産業公害防止の測定分析機関として、1971年に愛知県名古屋市で設立されました。TTCは1976年に濃度と音圧レベルで環境計量証明事業登録を行うなど、公害防止の分析機関としての基礎を築いていきました。その後、総合的な環境調査機関へと発展し、現在では「環境測定」「製品等の品質」「土木・建築」の3本柱で、公官庁や企業からの依頼を受けて測定や分析を行っています。本所敷地内の「セントラルラボ」(愛知県名古屋市)に加えて、2004年には「三河試験所」(愛知県豊橋市)、2017年には「ハイパーラボ」(愛知県瀬戸市)を開設し、TTCはその分析の規模や能力を大きく高めてきました。また、名古屋市にあるTTCの本所では、現在、働きがいや働く喜びを感じる社屋を目指し、新社屋の建設がスタートしています。常務理事 林 辰哉(はやし・たつや) 氏、環境測定分野を統括する環境計測・環境分析事業部 部長 土屋 忍(つちや・しのぶ) 氏、製品等の品質分野を統括する材料分析・品質評価事業部 部長 丹羽 啓誌(にわ・ひろし) 氏に、TTCの分析技術や将来展望などについて伺いました。

常務理事 林 辰哉 氏

環境計測・環境分析事業部 部長 土屋 忍 氏

材料分析・品質評価事業部 部長 丹羽 啓誌 氏
事業を拡大できた背景とは?
「公害分析を祖業とするTTCは、PCB(ポリ塩化ビフェニル)やアスベスト、環境ホルモンやダイオキシンの分析など、その時々のニーズに対応して環境分野での専門性を広げてきました。それに加えて、化学分析の知見と第三者機関としての中立性を生かし、隣接分野にも事業を拡げてきました。拡大した分野の1つが社会インフラを支える土木・建築分野です。建築材料については「コンクリートや骨材などの物性試験だけでなく、化学的な観点での分析にも対応します。化学のノウハウがあったことと、中立的な立場にある第三者機関であることの強みが成長を後押ししてくれました」(林常務理事)と言います。
さらに、東海地域に根差した分析機関という地の利も生かしています。東海地域は自動車や自動車関連部品や機器メーカーが集まる地域として知られています。TTCはこうした地の利を生かし、車室内VOC(揮発性有機化合物)、自動車排ガス触媒、車載用電池などをはじめ、様々な製品の品質評価などの事業を拡大してきました。まだ、自動車にとどまらず、コピー機を始めとする事務機器のVOC測定や、農産物を含む様々なサンプルのにおい分析などでも実績があります。東海地域の地の利を生かしつつも、分析の依頼は日本全国から寄せられています。そして、TTCの分析の実績を知った海外の企業から直接声がかかることもあると言います。
化学のノウハウを元に対応できる測定・分析の能力を拡大するとともに、地元の製造業の測定・分析ニーズに幅広く対応できるようになったことがTTCの事業拡大につながりました。
また、公的機関の使命として、依頼された分析には可能な限り対応してきたという実績もあります。「適切な機器がないためにニーズに応えられない場合もありますが、『ここまでならできる』という場合には、お客様の了承を得てお受けすることもあります」(林常務理事)と言います。こうして積み重ねてきた経験が、現在の幅広い事業基盤につながっています。
PFAS分析:水道水を始め、さまざまなサンプルの分析に対応
環境分析においては、PFAS分析への対応も強化しています。PFASとは、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物のことで、その数は数千種類とも1万種類以上とも言われています。これらの有機フッ素化合物は、その難燃性、耐油性、耐水性などの特徴から、日用品から工業製品まで、幅広い製品で使用されてきました。自然には分解しにくく、人体や環境に長く留まることから「永遠の化学物質」とも言われます。人体や環境への影響が懸念されており、近年、その製造・輸入が規制されています。
また、水道水についてはPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)の合計値について暫定目標値が定められており、2026年4月からは水質基準項目へと格上げされます。TTCでは、2009年からPFASの1化合物であるPFOSの分析を行っており、その後、徐々にPFOAやPFHxSへの分析に対応して、PFAS分析の能力を拡充してきました。TTCで対応できるサンプルも、水道水だけでなく、環境水、排水、土壌、肥料、廃棄物、排ガスなど多岐にわたります。排ガス中のPFAS分析ではそのサンプリングにもノウハウが必要となりますが、TTCではサンプリングも含めて提案が可能です。土屋氏は「濃度の規制のあるPFOA、PFOSについての定量試験に対応するのは当然のこととして、分析できる項目数を増やしていくというのが1つの方向性です。同時に、分析できるサンプルの種類も拡充させていきます」と話します。
TTCでは、PFASの多成分分析用として、このたびLC/MS(液体クロマトグラフ質量分析計)を導入しました。様々なメーカーのLC/MSが稼働中のTTCのラボですが、今回導入したのはアジレント・テクノロジーの「Agilent 6475 トリプル四重極LC/MS」でした。これまでアジレントのLC/MSを使用したことはなかったものの、アプリケーション担当者の知識に加え、分析メソッドの提供など、導入後すぐに稼働を開始できるようにするための支援体制などを評価して、アジレントのソリューションを選択したと言います。
また、PFASの浄化技術を開発する企業やコンサルティング会社では、浄化したPFASがどのように分解されているのかを詳しく追っていきたいといニーズもあります。TTCではこのようなニーズに応えられる高分解能・精密質量分析計なども別途導入済みです。
未知試料の定性分析を強化
その時々のニーズにあわせて能力を拡大しているTTCですが、クレーム品の原因究明や添加剤の分析、におい分析など、未知試料の定性分析の能力も強化しています。「製品ラベルに記載されていない化合物が含まれており、その化合物がにおいの元になっていることがあります。そういった未知試料の定性分析を行うために、精密質量を測定できるGC/Q-TOF(ガスクロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析計)も導入しました。」(丹羽氏)と話します。TTCでは、「Agilent 7250 GC/Q-TOF」などを未知試料の定性分析に活用しています。
TTCはにおい分析を得意としており、使用するGC/MSの多くには加熱脱着装置がついています。「Agilent 7250 GC/Q-TOF」の導入により、におい分析において新たな方向性が見えてきていると言います。「従来、あるにおいの元となると信じられていた化合物が、実は別のものであることが判明したという報告もあります。Agilent 7250は非常に感度が高く、今まで検出できていなかった化合物が検出されることもありますので、におい分析の発展に役立つ可能性があります。」と、丹羽氏は話しています。
未知試料の定性分析に活用されているAgilent 7250 GC/Q-TOF
アジレントを選ぶ理由とは
TTCでは、「Agilent 6475 トリプル四重極LC/MS」や「Agilent 7250 GC/Q-TOF」をはじめ、アジレントのソリューションを多岐にわたって使用しています。特にGC/MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)は長年にわたり様々なモデルを導入してきました。「電話で技術的な問い合わせをすると、短時間で返事がある」「一般的ではないアプリケーションについての問い合わせでも答えが得られる」(丹羽氏)と、使用するうえでの安心感に触れています。土屋氏も「装置の堅牢性や再現性に優れている」「メンテナンスの頻度が少なくすむため、ランニングコストを抑えられる」「新しいアプリケーションについて質問してもよく知っているし、営業担当者とも技術的な話ができる」という点に言及しています。一方で、ソフトウェアの使い勝手のさらなる向上を求める声もあります。
油のPCB分析、作業環境のVOC、土壌などの分析にGCやGC/MSを活用
環境水、水道水、廃棄物に含まれる微量元素の測定にAgilent 8900 トリプル四重極ICP-MSを活用
分析にかける思いと、未来のラボ
土屋氏は、TTCが提供する分析サービスについて、「法律で定められた項目について数値を報告するだけではなく、その数値の背景についても説明できるようにしたいと考えながら仕事をしています。」と語ります。自分たちが疑問を持つところは、お客様も疑問を持つところかもしれません。TTCでは特別に意識しているわけではないというものの、あらかじめ再分析をしたり、考察を提供したりするなど、お客様の立場に立って分析を進める姿勢が当然のこととして行われていると言います。
TTCのコーポレートスローガンは「これからのために (TRY TO CHANGE)」です。かけがえのない地球環境と次世代を担う子どもたちの「これから」のために、「環境への配慮」や「製品の品質管理」といった分野で貢献していくという思いが込められています。アジレントも同様の考え方を共有しており、 “Let’s bring great science to life” (科学の叡智を、生活と生命へ)というメッセージを発しています。最先端の科学の知見を、私たちの生活の向上に役立てていくことを目指しています。
将来に向けて、TTCのラボも進化を遂げていきます。より精密な分析への対応といった進化が求められることはもちろん、未知試料の分析能力の進化の重要性を感じていると言います。サステナビリティへの意識が高まるなか、欧州を中心に自動車や容器包装などにリサイクル材の使用を義務付ける動きがあります。リサイクル品の原料となる材料のなかには、何が含まれているか分からないものもあるため、不純物の分析においては未知試料の定性分析のニーズが高まっているからです。
未来の分析ラボについて、丹羽氏は「AI(人工知能)や自動化の技術は想像する以上に進展していると感じます」と話しています。TTCでは、AIや自動化の活用について、現在、検討を進めていると言います。たとえば、AIについては、未知試料の同定に活用することを検討中です。
TTCでは、今後も新たな技術を取り込んで、「これから」のために貢献していきます。
本記事に掲載の製品はすべて試験研究用です。診断目的にご利用いただくことはできません。
(Not for use in diagnostic procedures.)
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