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お客様紹介:ラボのデジタル化で品質管理の効率化を図る―――武州製薬株式会社

2025年6月20日

 

武州製薬株式会社は、1999年の事業開始以来、四半世紀以上にわたって医薬品受託製造事業を展開しており、輸出国数が56か国に及ぶグローバルなCDMO (医薬品受託開発製造専門会社)です。開発段階の治験薬、小スケールから大スケールまで固形剤(高活性製剤を含む)を製造可能なほか、ゼリー剤の製造、注射剤の充填にも対応可能です。武州製薬 川越品質管理部では、同社の川越工場(埼玉県)で製造する医薬品やその原料・原薬等の試験を行っていますが、その試験データ管理の負担を軽減する先進的な取り組みを進めています。同社 川越品質管理部 Quality Systemグループの佐藤 心平 氏にお話を伺いました。

 

 

武州製薬株式会社 川越品質管理部 Quality Systemグループ 佐藤 心平 氏

 

 

 

品質管理に欠かせない機器やデータ管理の課題

医薬品は、原料の受け入れから出荷まで、徹底した製造管理や品質管理(GMP)が求められます。武州製薬 川越品質管理部の各グループでは、医薬原料、原薬、製造した医薬品、製造途中の工程品、包装資材、微生物、製造環境などの試験を行っており、医薬品の品質を守るうえで欠かせない部門となっています。その1グループである、川越品質管理部 Quality Systemグループでは、他のグループで行う試験方法の策定や、試験の指図、および試験設備の管理などの役割を担っています。

試験には、UV(紫外線吸光光度法)計、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)、水分計、滴定装置など、様々な装置が用いられます。装置ごとにユーザー管理とデータのバックアップが必要ですが、こういった作業が大きな手間になっていました。装置ごとにログインのアカウントやパスワードが必要となりますが、1人のユーザーが複数の試験装置を利用するため、パスワードを間違えてアカウントがロックされてしまうようなケースが見受けられました。そのたびに、情報システム部門(IT)の担当者がパスワードのリセットのために装置に出向く必要がありました。また、「バックアップについては、3か月の一度、ITの担当者が、各装置の空き時間を見つけて手作業で実施していました。装置は日常的に試験で使われているため、その空き時間を確保するのは大変です。さらに、30台以上の装置があるので、その日程調整とバックアップ作業は大きな手間となっていました。」と、佐藤氏は話しています。

 

約 6万5000平方メートルもの敷地に、製造棟、包装棟、倉庫棟、設備棟、AC試験エリアなどが配置され、さらにはバーベキュー施設やテニスコートも備える武州製薬 川越工場

 

ユーザー管理とバックアップの手間を削減した方法とは

そこで、川越品質管理部 Quality Systemグループでは、2023年ごろから、バックアップの自動化とユーザー管理の工数削減を実現できるシステムの情報収集を開始しました。その過程で知ったのが、アジレントの科学データ管理システム (SDMS)「OpenLab ECM XT」でした。アジレントが開催するセミナーでこのシステムの話を聞いたところ、「データを自動でバックアップしてサーバーで簡単に管理できるという点が、川越品質管理部のニーズにぴったり合っている」(佐藤氏)と感じたことから採用を決め、2024年の秋から稼働を開始しています。OpenLab ECM XTは、ベンダーを問わず様々なデータシステムや測定機器で生成されるデータを一元管理できるシステムです。データの自動収集および自動保管、データの自動アーカイブ化など、さまざまな機能があり、またデータインテグリティに関する各種ガイドラインに準拠してデータを管理できます。対象となる装置や装置制御PCにソフトウェアをインストールしないOpenLab ECM XTは、接続可能な装置が多いという利点があります。

川越品質管理部で活用しているOpenLab ECM XT の主な機能は2つあります。1つがバックアップの機能です。今回、34台の装置をネットワークで接続し、装置によって1か月ごとに自動でデータのバックアップをとる、あるいは測定のたびにバックアップをとる体制に変えました。従来必要だったバックアップの日程調整やバックアップ作業が不要になりました。自動化とあわせて、従来3か月に1度だったバックアップの頻度を1か月1度に増やしました。また、バックアップされたデータは東京都と福島県のデータセンターの2か所に保管されており、災害時の事業復旧(ディザスタリカバリー)も考慮されています。

もう1つの機能が、ネットワーク上の離れた場所から装置や装置制御PCにリモートアクセスできる「リモートワークスペース」です。この機能を活用することで、アカウントがロックされてしまった場合でも、装置のそばまで行かずにパスワードをリセットできるようになりました。リモートワークスペースの機能を使うと、川越品質管理部の各グループの試験責任者は、自分の席にいながら試験結果の電子承認を行うことができます。これにより、情報システム部門の担当者も、川越品質管理部の各グループの試験責任者も、業務効率が改善されました。

導入のメリットはこれにとどまりません。佐藤氏は、「お客様から弊社の製造や品質管理の体制について監査や査察を受けることがあります。OpenLab ECM XTでデータインテグリティを確保していることや、バックアップの頻度を高めたことで、ご安心いただけることがありました」と話します。

川越品質管理部ではアジレントのガスクロマトグラフ (GC) と液体クロマトグラフ (LC) も導入していますが、今回のOpenLab ECM XTで管理している装置は、すべてアジレント以外のベンダーの試験装置です。佐藤氏は、「データ管理ソフトウェアは、様々なベンダーの装置と接続できることはわかっているので、特に心配することはありませんでした」と話します。

 

OpenLab ECM XTでは、Content Browserと呼ぶツールでサーバーデータベースにアクセス

システムの導入にあたってはアジレントの技術者からサポートが役立ったと言います。佐藤氏は、「メールで問い合わせた場合も速やかに対応してもらえますし、電話での対応もとても丁寧で、詳しく教えてもらえます」と話しており、アフターサポートにも満足していると言います。

 

今後の展開

アジレント・テクノロジーでは、デジタル化を含む「未来のラボ」を提案しており、実際、未来のラボを実現するためのソリューションを幅広く提供しています。「OpenLab ECM XT」も未来のラボを実現するコンポーネントの1つです。「OpenLab ECM XT」を導入するなど、CDMOとして、いち早くラボのデジタル化に取り組んでいる武州製薬ではさらなる未来も見据えています。

武州製薬には、川越工場のほか、美里工場(埼玉県)と会津工場(福島県)があります。同じような悩みを持つである他の工場にも、川越工場での成功事例を展開していくことも念頭に置いていると言います。また、今回のシステムで負担が軽くなったのは主にITと試験責任者ですが、今後は測定結果をLIMS(ラボ情報管理システム)に自動で送信するシステムを導入し、品質管理部の試験者の負担を軽減していくことも課題だと考えています。

武州製薬では今後もデジタル化を推進し、先進的なラボを実現してきます。


武州製薬株式会社
本店所在地:埼玉県川越市竹野1番地
営業開始:1999年
代表者:代表取締役社長 兼 CEO (最高経営責任者)髙野 忠雄
事業概要:医薬品・治験薬の受託製造

 


 

 

本記事に掲載の製品はすべて試験研究用です。診断目的にご利用いただくことはできません。
(Not for use in diagnostic procedures.)

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