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お客様紹介:最新の自動分析システムで、高度化成肥料の工程品分析を効率化―――ジェイカムアグリ株式会社

2024年9月18日

ジェイカムアグリ株式会社は、石灰窒素や合成硫安(硫酸アンモニウム)などで歴史のある企業を含む、複数の企業を母体とする化学肥料メーカーです。旭化成株式会社を前身とする同社の富士工場では、今から30年近くも昔から、高度化成肥料製造時の工程品の分析を自動化してきました。このたび、メンテナンスにかかる工数の削減を見据えて、最新の自動化システムを導入しました。同社 生産管理本部 富士工場 環境安全品質課 課長 吉田 彰秀 氏と、山下 大介 氏に話を伺いました。

ジェイカムアグリ株式会社 生産管理本部 富士工場 環境安全品質課 課長 吉田 彰秀 氏(右)と、山下 大介 氏(左)

 

日本で、世界で、宇宙で活躍する肥料

植物の生育のためには、17種類の栄養素(元素)が必要だと言われています。水素、酸素、炭素は、水や二酸化炭素から容易に吸収することができますが、植物の3大栄養素である窒素、リン、カリウム、そして二次要素であるカルシウム、マグネシウム、硫黄、必須微量元素である鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、銅、塩素、ニッケルなどの元素は、植物の生長と共に土壌から失われていくため、肥料により補充する必要があります。農作物の収量や品質に大きく影響する肥料は、安定的な食糧供給という観点で欠かすことはできません。

ジェイカムアグリ株式会社では、化成肥料、被覆肥料(樹脂をコーティングし、溶出するタイミングをコントロールした肥料)、複合肥料、水稲育苗箱施肥専用肥料、緩効性窒素質肥料、成型肥料などを開発・製造しています。その肥料は日本のみならず、海外にも輸出されており、米、麦、野菜、花、果物、茶などの生産に用いられています。同社の肥料は地球で暮らす私たちの食生活を支えるだけではありません。吉田氏は、「国際宇宙ステーション (ISS) でも使われた実績があります。新鮮な野菜を地球からISSに運ぶことが難しいため、栽培システム、野菜の種、肥料を持ち込み、ISS内で栽培しようという実験です。この実験では、同社のNutricoteという海外向けブランドの被覆肥料が用いられたと言います。レタス、ラディッシュ、白菜など、様々な野菜の肥料として採用されました。」と、同社の肥料の活躍を紹介しています。

 

工程品を一定時間ごとに分析

化成肥料、被覆肥料、複合肥料、成型肥料などを製造する同社 富士工場。その環境安全品質課では、環境安全管理のほか、製品や原材料の分析、さらには製品の出荷判定を行い、安全かつ既定の効果を発揮する肥料を世の中に届けています。

24時間稼働する化成肥料の製造工程においては、工程の途中で一定時間ごとに、窒素、リン、カリウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素、鉄の成分値の定量と合否判別を行い、その定量結果をもとに原材料投入量を制御しています。20世紀後半に稼働したこのシステムは、溶解・ろ過・希釈から、定量、レポート作成までを自動で行うことができる、当時としては非常に先進的なものでした。しかし、稼働開始から四半世紀を超え、人員の異動などの影響で、メンテナンス面で不都合が出てきました。内製したシステムであったことから、「トラブル発生時には社内で原因を突き止め、必要な部品を交換するなど、メンテナンスに工数がかかっていました」と、山下氏は話します。そこで、2021年から理化学機器メーカーの汎用装置を組み合わせて、前処理から分析、レポート作成までを自動で行えるシステムを構築すべく検討を始めました。

検討の結果、工程品で分析している元素のうち、リン、カリウム、マグネシウム、マンガン、ホウ素、鉄用として、同社が採用したのは、検出器部分にアジレント・テクノロジーの誘導結合プラズマ発光分光分析装置「Agilent 5800 ICP-OES」を含むシステムです。Agilent 5800 ICP-OESに決めた理由は2つあると言います。1つは非常に小型であるということ。「分析を止めるわけにはいかないので、既存システムは稼働させたまま、新システムを導入する必要がありました。そのため、小型のAgilent 5800 ICP-OESは我々のニーズに合いました」と山下氏は言います。2つめの理由は自動化への対応が考慮されているシステムだったことです。「アジレントはICP Expert自動化ソフトウェアパック を提供しており、別のメーカーに発注している前処理装置のソフトウェアとの連携が容易でした。また、年間300日以上、毎日10回以上プラズマを点火し、ペリスタリックポンプを稼働させるという、装置に負荷のかかる使い方をしていますが、アジレントのポンプは堅牢であり、また様々なチューブが提供されています」と山下氏は続けます。

Agilent 5800 ICP-OESを中心とした化成肥料工程品自動分析システム。写真左側の装置で溶解、ろ過、秤量を行い、サンプル調製。そのサンプルを5800 ICP-OESで定量。分析結果は写真右上のプリンタで自動出力される。

 

ユーザー目線でのサポート

内製のシステムから、理化学機器メーカーの装置をベースにしたシステムに移行する目的の1つがサポートにかかる社内の工数を削減することでしたが、システム稼働にあたってのアジレントのサポートにも満足していると言います。「一般に、異なるメーカーの装置を接続した場合、トラブルが発生しても、十分なサポートを受けられないことがあります。ある会社の装置の制御用のパソコンに、別の装置を制御するソフトウェアをインストールしただけで、『それが原因かもしれない』と言われて、取り合ってもらえないこともあります。しかし、アジレントは、システムの特殊性や、24時間稼働で夜間は無人になるという当社の使い方を理解したうえで適切なサポートをしてくれます。難しい問題でも、数日中には解決策を用意してくれました」と山下氏は話します。新システムは小型化実現のため、先進的な構成を採用しています。たとえば、1つのアームを複数の工程で共用する構成となっており、コンタミネーションなどに特に配慮する必要がありました。そういった影響で生じる問題でも、アジレントからのサポートを十分に受けられていると言います。「品質保証部での勤務経験を持つエンジニアがサポートしてくれており、私の知らなかったノウハウなどを教えてくれることもあります。分析条件の作成までもサポートしていただきました」(山下氏)と言います。

アジレントが提唱する「未来のラボ」の実現には、自動化、デジタル、コラボレーションの3つの要素が必要です。このシステムは、装置の自動化に加え、前処理機器の連携を含め、まさに「未来のラボ」に一歩近づいたものだと言えます。山下氏は「現在は技術的に解決すべき課題が多いが、将来的には粉砕、秤量なども含めた完全自動化を進めたい。また、被覆肥料や原料の分析などにも自動化を広げていきたい」と将来像を描いています。

 

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