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お客様紹介:公衆衛生から観光・輸出まで、道民の生活と産業を支える北海道薬剤師会公衆衛生検査センター

2021年11月5日

一般財団法人 北海道薬剤師会公衆衛生検査センター(道薬検)は、道民の医療、福祉、環境衛生の向上に寄与することを目的として、1974年に設立されました。この目的達成のため、公衆衛生の普及振興、健康促進の啓発活動、食品衛生や環境衛生の試験・検査等を行っています。道薬検は、水道法、食品衛生法などに基づく登録検査機関として、水質検査や食品検査などを行うほか、学校内のシックハウス検査、新生児のマススクリーニング検査など、公益性の高い事業を展開しています。同センター 副所長 中村次也(なかむら・つぐや)様、水質検査などを扱う試験検査部生活衛生グループで目黒 大基(めぐろ・ひろき) 様、久保田 瑞穂(くぼた・みずほ)様にお話をうかがいました。

北海道薬剤師会公衆衛生検査センター

 

北海道の水を守る

道薬検の試験・検査業務のなかで、特に比重が大きいのが、水道法に基づく飲料水の検査。水道法の基準項目、管理目標設定項目、要検討項目などの分析を行っています。また、排水の分析などのニーズもあります。水道法では、サンプルを採取してから12時間以内に分析に着手する必要があります。道薬検では、札幌市内にあるラボで、道内各地で採取されたサンプルの分析を行っています。離島を除く北海道本島としては最東端にある根室市から、ラボのある札幌までの距離は、およそ400 km強。これは、東京から滋賀県米原市、あるいは大阪府大阪市から山口県山口市までの距離だと考えるとイメージしやすいかもしれません。「根室でサンプルを採取したとしてもそれを空輸し、新千歳空港で受け取ったら、すぐにラボまで運んで分析できるような体制を取っています。これは北海道ならではと言えるかもしれません」(中村副所長)。

ラボの様子。北海道各地から寄せられるサンプルを分析

 

飲料水においては、味、色度、臭気、濁度、一般細菌などのほか、鉄やマンガン、その他の金属元素やその化合物の分析のニーズがありますが、金属元素の分析にはICP-OES (誘導結合プラズマ発光分光分析装置)やICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)といった装置が活用されています。また排水中の重金属や、食品衛生法に基づく海水の分析のニーズにも応えています。

 

北海道の観光や名産品を支える

北海道は日本で最も温泉地数の多い都道府県です。温泉法では新規で温泉を掘った際、そして10年ごとに温泉成分の分析が義務付けられていますが、この温泉水の分析にもICP-OESなどの装置が使われており、銅、亜鉛、その他の重金属が測定されています。「北海道は観光が大きな産業。今後も新たに温泉が掘られれば、新たな温泉分析のニーズが生まれます。ニセコなど、外国人観光客の多かった数年前まではホテル建設も活発で、温泉分析の依頼も次々と寄せられていました。日常生活や経済活動がノーマルに戻れば、再び温泉分析のニーズが高まるでしょう」(中村副所長)と期待を寄せています。

ホタテの漁獲量日本一の北海道。漁獲量9割以上を占めており、その一部は海外にも輸出されています。貝の輸入にあたって厳しい検査を要求する国もあり、道薬検でも、無機ヒ素の化学形態別分析(スペシエーション分析)を実施できる体制を、十数年前から整えています。中村副所長は、「中国では無機ヒ素の基準値が定められています。道立の衛生研究所で無機ヒ素分析の第一人者の元で勉強させていただき、無機ヒ素の形態別分析のノウハウを身に着けました。」と振り返ります。道薬検でも、液体クロマトグラフ (HPLC) とICP-MSを接続した、LC-ICP-MSというシステムを導入しており、3価と5価のヒ素の形態別分析のサービスを提供しています。ヒ素からスタートした形態別分析ですが、最近では土壌中のセレンの形態別分析などの依頼にも応えようとしています。土壌については、北海道新幹線の札幌延伸工事に伴う分析ニーズもあると言います。

貝毒の形態別分析でホタテの輸出を支えるLC-ICP-MS

 

各種分析サービスの提供においては、正確な値を提供することはもちろんのこと、スピードも売りにしていると言います。久保田様は「いかに納期を早められるかを意識して分析を進めています」と、強調しています。

技術資料と電話サポートを活用

道薬検では、付き合いの長いお客様から新たな分析についての相談も寄せられており、これまでやったことのない分析にも積極的に挑戦していこうとしています。目黒様は、新しい分析のチャレンジには文献と経験が役立つと言います。「各種の文献を当たれば、何かしら必要な情報が見つかります。また、今までの経験から『こうやれば測定できるのではないか』と、ある程度推測できます。」と、技術を信頼してくださっているお客様からの新たなニーズへの対応にも意欲を示しています。アジレントのウェブサイトに掲載されているアプリケーションノートが役に立つこともあるそうです。

飲料水や排水中の金属分析に「Agilent 5100 ICP-OES」を活用しているという目黒様、飲料水、海水、貝毒などの分析に「Agilent 7800 ICP-MS」や、アジレントのLC-ICP-MSシステムを活用する久保田様は、エラーが出たときや、不明点があるときには、電話でアジレントに問い合わせると言います。お二人とも、「電話のやり取りで適切にサポートが得られており、問題は解決できています」と話しており、アジレントのエンジニアが直接ラボを訪問しなくても、問題なくラボでの分析ができているようです。

 

飲料水や排水などの金属分析に活用されるAgilent 5100 ICP-OESと目黒様

久保田様はICP-MSについて「ソフトウェアの解析画面が分かりやすく感じます。濃度一覧や、内部標準の含有量など、ぱっと見て分からないところがなく、迷うことがありません」と言います。Agilent 7800は、アジレントの旧モデルのサポート終了にともない、導入したものですが、思わぬメリットもありました。アジレントではプラズマのオートチューン機能を改良したり、プリセットプラズマ条件を提供したりしていますが、実際、久保田様も「7800を使うようになってから、プラズマのチューニングに苦手意識がなくなりました」と、その使い勝手を実感していると言います。

Agilent 7800 ICP-MSの導入で「プラズマのチューニングに苦手意識がなくなりました」(久保田様)

 

最後に、中村副所長は、道薬検の事業についてこう話しています。 「私たちは、飲料水の分析や、札幌市を除く全道の新生児の先天性代謝異常等のマススクリーニング検査を実施するなど、公益性の高い事業を展開しています。今後も地域の方の安全と道民の皆様の公衆衛生向上に貢献していきます。」

「今後も地域の方の安全と道民の皆様の公衆衛生向上に貢献していきます。」と話す中村副所長