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お客様紹介:高杉製薬株式会社 --微量金属の一斉分析にICP-OESを導入。不純物の少ない化学薬品を求める顧客ニーズに対応

2020年3月12日

福岡県糟屋郡粕屋町。福岡空港から直線距離で2.5 km ほどの北に、創業90年を超える化学薬品メーカー、高杉製薬株式会社があります。医薬品をはじめ、試薬、食品添加物、化学工業薬品などを製造・加工・販売している高杉製薬。販売する物質の種類は30種類程度。同社が取り扱う物質の1つ、硫酸ナトリウムは、試薬、医薬品の原料、洗剤の洗浄力を高める助剤、染料の希釈液、浴用剤などに使われています。最終製品において、同社の名前を見ることは少ないかもしれませんが、実は私たちの生活の身近な分野で使用されています。同じ物質でもニーズにあわせた規格の容量、純度、濃度に対応しており、取り扱いアイテム数としては500点に及びます。

高杉製薬では、最適な濃度に調製したり、希望の荷姿(ポリ缶、コンテナ、ポリエチレン瓶などの包装形態)や容量で小分けしたりするなど、顧客ニーズにきめ細かく対応できることが強みとなっています。また、「特定の不純物を取り除いてほしい」、「分析項目を追加し、不純物の量を微量レベルまで報告してほしい」といった要望も多く、こういった要望にも柔軟に対応しています。

同社の工場で製造された化学薬品が規格を満たしているか、出荷前に検査を行っているのが、技術部 技術課。課長の中園 貴徳 (なかぞの・たかのり)氏、および技術課 品質管理係 係長 藤 文章 (とう・ふみあき)氏に話をうかがいました。

常に厳しい目で製品を評価

「当社の品質に対する思い入れは強い。世の中も、品質を重視する流れになっている」と中園 氏は語っています。GMPおよびISO9001:2015に基づいて製品の開発、製造、検査、販売を行う同社の品質に対する意識はきわめて高く、イオンクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)、分光光度計、TOC計(全有機体炭素計)、AA(原子吸光光度計)など、さまざまな装置を取り揃え、製品が規格どおりにできていることを確認し、万が一、規格に合わないものがあれば、決して出荷することがないよう、全力を挙げています。「会社の規模を考えれば、いろいろな分析装置をそろえている方だと思う。お客様から要求される試験項目は、社内で対応できている」(中園氏)と、ハード面の体制を整えていることを強調します。さらに同社では、個人のスキルを認定する社内資格認定制度があり、分野ごとに定められた資格を有している専門家のみが合格判定を出せるという体制をとっています。各メンバーがどのようなスキルを有しているかは、マップ化して把握しています。また、メンバーは、全員が年に1~2回は社外研修に参加し品質管理の考え方等について学んでいます。学んだことは課内の会議で共有し、課全体のレベルアップに繋げています。ハード面だけでなく、人というソフト面でも、高いレベルの品質管理を追求しています。

公定法の改訂により、ICP-OESに注目

技術部 技術課では2016年に、銅、亜鉛、鉛、鉄、ニッケル、アルミニウムなどの金属を分析する装置として、新たにICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析装置)を導入しました(参考:「年譜」の2016年の項 参照)。導入のきっかけは、公定法が変わってきたことでした。「日本産業規格 (JIS)において、当社で扱っている製品の一部につき、その分析方法が、AA からICP-OESに変更されるという情報を入手した。そこで、当社でもICP-OESを導入する必要が出てきた」(藤 氏)。

取引のなかったメーカーの製品を検討の俎上に

同社では、アジレント・テクノロジーの装置を導入したことはありませんでしたが、近隣大学のICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)を使用して分析することがあり、その装置がアジレント・テクノロジー製でした。「元素分析、特に、ICP-MS、ICP-OESと分析方法の違いはあれ、ICPと言えばアジレントという印象を持っていた」(中園 氏)ということから、アジレントを含む数社のICP-OESを比較したと言います。

 

お客様からの要求にあわせて、規格にはない微量金属を分析する場合などに活用されるAgilent 5110 ICP-OES

 

技術部 技術課がICP-OESに求める感度は、検討中のどの会社の製品もクリアしている……選択の基準は「装置の感度」から、「会社としてのサポート体制」に移っていました。「困ったらすぐ来てくれるか」、「すぐに連絡が取れるか」といった点を重視したと言います。検討時の問い合わせへの対応の早さなどが決め手となり、Agilent 5110 ICP-OESを導入することとなりました。導入後は、主に、銅、鉄、ニッケル、アルミニウムなどをAgilent 5110 ICP-OESで分析していると言います。実際に使用してみて気づいたのはソフトウェアの使いやすさ。「直観的に使える。現場に近しいソフトウェアというイメージ」(中園 氏)、「画面がシンプルで、このボタンを押せばこうなると想像しやすい」(藤 氏)と感じているそうです。

また、「見たことのないエラーが出た場合など、メールや電話で問い合わせをするとすぐに返事をもらえるのが助かる」(藤 氏)、「コールセンターにすぐに電話がつながり、ある程度の問題ならそこで解決できるのが良い」(中園 氏)と、アジレントのサポートを評価しています。「何かあったときにすぐにエンジニアが来てくれることも重要」(藤 氏)と話していますが、幸い、今のところ、5110 ICP-OESの不具合でエンジニアを呼んだことはないそうです。

サポート面での安心感もあり、翌2017年には、AAもアジレントの装置を導入しています。公定法上、AAでの分析が求められる場合はAgilent 200シリーズ を、RoHS(電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会及び理事会指令)関連の分析や、お客様からの要求にあわせて、規格にはない微量金属を分析する場合はICP-OESを活用しています。ICP-OESの導入により、金属の一斉分析が可能になったほか、従来は社外のICP-MSを借りて実施していた分析もほとんど社内で行えるようになりました。「今は、最終製品の検査を外注することはない」(中園 氏)と言います。

 

引き続きAAも活用し、公定法に従った各種分析を実施

 

硫酸ナトリウム 新工場稼働

技術部 技術課では様々な分析に携わっていますが、「製品の分析結果が規格内に収まってはいるものの、ちょっとおかしい…と感じることもある。合否だけでなく、試験者はそういう点にも気を配って分析にあたっている。」(中園 氏)と言います。2020年4月末には本社敷地内に新たな工場が完成予定で、従来からのJIS試薬特級や自社一級に加えて食品添加物や医薬品向けの硫酸ナトリウムを増産する予定です。技術部 技術課でも、新工場の品質の安定に向けて、分析の面から様々な支援をしていくことになると言います。新工場は、日本薬局方に対応した製品の製造も行うので、それに従った分析やバリデーションも必要となるそうです。

高杉製薬の経営理念は、「誠実を旨とし 創意工夫に努め 仕事に愛情と情熱を傾け 永遠の信頼と発展に挑戦します」。創立100年、さらにはその先に向け、さらなるチャレンジに挑みます。

 

取材にご協力いただいた高杉製薬株式会社 技術部 技術課のメンバー