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お客様事例紹介:「安心して使える漢方薬」を支える厳しい品質管理

2010年9月14日

 

 
  株式会社ツムラ 茨城工場

 全高120 mという、人型建造物としては世界最大級の「牛久大仏(うしくだいぶつ)」に隣接した茨城県福田工業団地の一角に、漢方製剤の製造工場として世界一の規模と生産能力を誇る株式会社ツムラ(以下、ツムラ)の茨城工場があります。そこで漢方薬の原料となる生薬および漢方製剤の品質を厳しくチェックし、安心して使える漢方製剤の生産を支えているのが品質管理部の皆さんです。

 

 

 

●漢方医学の確立を目指して

 
  漢方医学は、5~6世紀頃に中国から日本に伝来し、その後、日本の風土、気候や日本人の体質に合わせて独自の発展を遂げ、わが国の伝統医学となりました。

  中国で生まれ、日本で育った漢方医学とは、人間が本来持っている自然治癒力(病気と闘い、治す力)を高め、身体のコンディションを整えることで、不具合がある状態から健康な状態に近づけていこうとする医学です。漢方薬は、この漢方医学で用いられる薬のことで、薬草や動物、鉱物などに由来する生薬を、その目的に応じて2種類以上組み合わせた薬を指します。

  漢方医学は、5~6世紀頃に中国から日本に伝来し、その後、日本の風土、気候や日本人の体質に合わせて独自の発展を遂げ、わが国の伝統医学となりました。17世紀頃に特に大きく発展し体系化され、現在へと継承されています。

  漢方薬は、植物由来のものを中心に多数の生薬が使用されています(ツムラの医療用漢方製剤の原料生薬は、118種類)。漢方薬はいくつもの成分が助け合って働くことで、複数の症状に作用します。

 近年では、科学的な研究が進むにつれ、漢方薬は新薬治療では対処しにくい疾患にも効果を発揮することが認められるようになり、健康保険が適用される医療用漢方製剤は、医師の約8割が処方しています。さらに、2010年日経メディカル開発調査で、医師の86.3%が漢方薬を処方していることがわかりました。

<漢方を医師が処方するようになった動機>(複数回答可) 
(1) 西洋薬のみの治療では限界がある(51.1%)
(2) 学会などで漢方薬の科学的根拠が相次いできたから(34.6%)
(3) 患者からの強い要望があったため(24.6%)
(4) 高齢者など複数疾患を抱えた患者が増えたから(21.4%)
※2010年日経メディカル開発調査 
調査期間:2010年3月30日~3月31日
有効回答:日経メディカルオンライン登録者321名

 ツムラは、医療用漢方製剤のトップメーカーとして、日本の伝統医学である漢方医学を確立するためにさまざまな活動を行っています。

 

●原料の産地から生産までの各段階で厳しい品質試験を実施

 
 

株式会社ツムラ 生産本部 茨城工場
品質管理部 品質試験課
課長
滝 昌則氏

 ツムラの茨城工場は漢方製剤製造工場として世界一の規模と生産能力を誇ります。研究所・漢方記念館・薬草見本園などを併設し、最先端の工場として、内外でも注目を集めています。この茨城工場で漢方製剤の品質管理を担う滝 昌則氏に、お話を伺いました。

 「漢方製剤の原料である生薬は、中国から約80%、国内が約15%、残りを東南アジアから調達しています。医薬品の原料として用いるものですから、何か問題があった場合に原因を追及できるよう、すべてのルートにおいてトレーサビリティ体制の強化をしています。

 国内外の各工場における品質管理部門や分析センターでは、出所ごとの生薬の品質について厳しくチェックし、安全・安心な漢方製剤の生産に貢献しています」

 高い品質を維持するため、ツムラでは原料の産地から生産までの各段階で品質試験を実施しています。「原料の産地における品質試験をクリアした生薬のみを受け入れ、その後も次のように厳しくチェックするという万全な品質管理体制を整えています」と滝氏は話します。

 

  1. 受け入れ試験:日本薬局方に基づく試験を中心に、すべての生薬において残留農薬試験を実施しています。並行して異物の混入、生薬の性状(色、臭いなど)を調べ、基準以下のものは納入しません。
  2. 生薬の切裁:検査をクリアした生薬を決められた大きさに切裁(切断・裁断・粉砕などを行うこと)します。自社で切裁するシステムを持つことにより、生薬を原形のまま入手することが可能になり、品質管理を万全に行えるというメリットがあります。
  3. 秤量・調合:規定の配合比率に従って、切裁した生薬を調合します。
  4. 抽出・分離・濾過:調合した生薬に日局精製水を加え、一定時間抽出(煮出すこと)し、得られた抽出液を分離・濾過します。
  5. 乾燥:濃縮エキスの水分を除去するため瞬間乾燥によってエキスを粉末にします(スプレードライ)。ここで製造されたエキスは、承認規格に従った試験を実施します。主な試験には、液体クロマトグラフ(*)によって、エキス粉末に管理指標成分が規定の幅に含まれているかを検査する試験があります(1次試験)。
  6. 造粒:エキス粉末の安定性を高めるため各種の賦形剤を加え、タブレット状に固めた後、顆粒に仕上げます。この顆粒については、製剤としての規格試験を実施し、その中で再度液体クロマトグラフによる成分定量が実施されます(2次試験)。
  7. 充填・包装・市場出荷:資材検査に合格し、最終製品として最後の試験に合格したものが、製品として出荷されます。

 

*液体クロマトグラフ:化合物の分離や定量を行うために使用される分析装置。精製したい試料(試験・分析・検査に供される物質)を液体(移動相)とともに細長い管に注入すると成分ごとに分離される。生薬から有効成分などを分離することができる。

 

「ツムラの漢方製剤」。その品質を確保するために

 
 

株式会社ツムラ 生産本部 茨城工場
品質管理部 品質試験課
井上ひとみ氏

 品質試験に携わる40名のスタッフは、茨城工場で生産しているエキス・顆粒の品質に責任を負っています。それを支えているのが、アジレント・テクノロジーの液体クロマトグラフ(HPLC)です。

 品質管理部 品質試験課の井上ひとみ氏は、検査の様子を次のように話します。

 「複数台の液体クロマトグラフを使って、基準どおりの成分が入っているか定量試験を行っています。スタッフが半日かけて試料を調製し装置にかけて分析を行います。1処方1ロットについて6~12時間で分析結果が出ますが、それを数処方・数ロットについて行いますので成績書作成まで2日ほどかかります。アジレント・テクノロジーの液体クロマトグラフに変わってからは、解析時の精度が向上したことに加え、画面が見やすいのでとても使いやすく、また、すべて同じシステムで操作が統一されたため作業効率も上がりました」

 

 

 

 
アジレント・テクノロジーの液体クロマトグラフが活躍している  

液体クロマトグラフを使った検査風景

 

 品質管理部には年齢も経験もさまざまなスタッフが働いています。ここ数年、9%前後の生産拡大を続けるツムラの漢方製剤の品質を維持し続けるには、スタッフのスキル向上とモチベーションの維持が不可欠だと、滝氏は語ります。

 「スキル向上という意味では、教育を特に重視しています。また、モチベーションの向上においては密接なコミュニケーションが何よりも大切なのではないでしょうか」

 さらに品質管理部では、各種分析機器のデータを管理するLIMS(Laboratory Information Management Systems:情報管理システム)を導入し、試験開始から試験成績書発行までを自動化することで、迅速かつ正確な検査を行えるシステムを構築しました。

「優れた機器やシステムの恩恵は計り知れません。しかし、検査結果を最終的に判断するのは人間です。私は1日に100枚以上の検査結果をチェックし、合格かどうかを判断しています。責任の重い仕事ですが、40人のチームワークによって、生産能力の増強に応じた品質管理に対応しています。ツムラが提供する漢方製剤の品質を確保するための役割(安全性・有効性・均一性)を考えて、日々、取り組んでいます」(滝氏)

 

 
  品質への信頼が高いツムラの漢方製剤

 品質管理に携わっているお二人に、その難しさや楽しさについて伺いました。

 「2009年の事業仕分けで医療用漢方製剤が保険適用から外されるという報道があったときには、短期間に92万人もの反対署名が集まり、その数の多さにびっくりすると同時に、かかわる皆様の漢方に対する期待の大きさに感動しました」(井上氏)

「以前は、漢方薬には科学的ではないというイメージがあったかもしれません。しかし液体クロマトグラフを用いて成分定量を行えるようになった現在では、品質や均一性を担保でき、いつ服用しても同じ効果が期待できるようになりました。最近では『漢方薬は安心して服用できる薬』というイメージが定着してきていると思います。これも、先進的かつ高度な分析装置があってこそ成り立っているのだと思います」(滝氏)

 

 

 

 

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