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お客様紹介:数十台のガスクロマトグラフをネットワーク接続し、品質管理業務を効率化 ――― KHネオケム株式会社(2022/9/21)

2022年9月20日

石油化学コンビナートは、原油を精製してナフサなどを製造する企業、そのナフサを分解して、エチレンやプロピレンなどの石油化学基礎製品を製造する企業、その石油化学基礎製品を元に、アルコールや有機酸などの誘導品などを製造する企業などが集まっている工業地帯です。日本には、いわゆる太平洋ベルト地帯の各地に石油化学コンビナートがあります。その1つが三重県四日市市です。四日市には、第1から第3まで、3つの石油化学コンビナートがあります。KHネオケム株式会社は1963年(※前身の大協和石油化学株式会社 午起製造所操業年)に第2コンビナートで、1970年には第3コンビナートで操業を開始しています。配管橋でつながった2か所の製造所をあわせて約32万平方メートルに及ぶ四日市工場では、1日24時間3交代制で、溶剤や可塑剤原料などの誘導品を製造しています。

KHネオケムの有するコア技術はオキソ反応。プロピレンなどの不飽和炭化水素と一酸化炭素と水素を反応させて、アルデヒドを合成する技術です。石油化学基礎製品を製造する会社からプロピレンを購入し、KHネオケムがオキソ反応を使ってブチルアルデヒドを作り、そのブチルアルデヒドを元にブタノール、オクタノール、オクチル酸などに様々な誘導品に加工します。溶剤(ブタノールなど)や可塑剤原料(オクタノールなど)などの基礎化学品、冷凍機油原料や化粧品基材などの機能性材料にくわえ、半導体の製造に必要な高純度溶剤など、純度の高い製品を製造できることが同社の強みとなっています。

製造が適切に行われ、適切な製品を出荷していくためには、様々な検査や分析が欠かせません。KHネオケム株式会社 四日市工場では、分析機器をネットワークでつなぐことで、分析業務の効率化で成果をあげています。同社四日市工場 品質保証部 品質管理課長 加藤 義之様、品質管理課の細川 雅幸 様、山下 祥平 様、秋吉 銀次 様、菊池 和樹 様に、導入の背景や成果についておうかがいしました。

 

KHネオケム株式会社 四日市工場

 

ガスクロマトグラフで製品や工程サンプルを分析

品質保証部 品質管理課では、原料の受け入れにその品質に問題がないかを確認する原料の検査、製造プラントの各工程が正常に運転できていることを確認する工程分析、製造した製品が規格を満たしているかを確認する製品分析など、大きく分類すると3つの役割を担っています。溶剤を多く製造していることもあり、その純度や微量な不純物の組成などを分析するため、GC (ガスクロマトグラフ)を使った分析が多いと言います。ほぼすべての製品の分析でGCが使われています。「当社は純度の高い製品を提供できることが強みですが、そのためにはGCを使った不純物の確認などは必須です」(加藤氏)と話しています。また、分析のほとんどを占める工程分析においても、1日に1回から数回、各工程から提出されるサンプルをGCで分析することが多いといいます。実際、四日市工場には40台ものGCが並んでおり、これらをうまく活用することで、各種分析を行っています。

ネットワークシステムで、煩雑な分析業務をシンプルに

何十台もGCがあるものの、かつては、GC 2台につき、1台のパソコンが接続されたスタンドアロンの状態で分析を行っていたと言います。そのため、分析するサンプルをセットして、分析が終わると、そのデータ処理や、データ再解析のために、それぞれのパソコンまで出向く必要がありました。様々なサンプルを複数のGCに振り当て、並行して分析を行っているため、「どのGCの分析が終わっていて、どれが終わっていないのか分からなくなってしまうこともありました。また、工程サンプルの分析は非常に数が多いので、あまりに多忙なときは、どのGCでどのサンプルを分析したのか、混乱してしまうこともありました」(秋吉氏)と言います。1つのサンプルでも、異なる条件で複数の分析が求められるものもあり、「分析の進行管理が非常に煩雑になっていました」(加藤氏)と言います。このほか、同じサンプルを別のGCで分析しなければならないことも多々ありますが、スタンドアロンで動いているため、メソッドの移行やデータの比較が難しいという課題もありました。

喫緊の課題として、GCに接続されているパソコンのOSがWindows XPやWindows 7と古く、すでにサポートを終了しているか、サポート終了を迎えるという問題がありました。スタンドアロンで使用しているため、セキュリティ上の問題は少ないものの、パソコンが故障してしまうと、同じ環境を構築できないかもしれないという点が気がかりでした。

2019年当時、アジレントのGCを二十数台使用していた品質管理課では、スタンドアロンのまま、パソコンとクロマトグラフィーデータシステム (CDS)をバージョンアップするのか、それともGCをアジレントのOpenLabネットワークシステムでつなぐのかという検討を開始しました。アジレントからの提案を見ると、スタンドアロンのままバージョンアップするのも、新たにネットワークシステムを導入するのもコスト面では差がありませんでした。「最終的には、効率が上がり、煩雑さを低減できるということで、『OpenLabネットワークシステム』を選択しました。スタンドアロンで使い続ける場合と比べて、コスト面でもほとんど差はありませんでした」(菊池氏)と話しています。

2020年3月~4月、定期修理工事で工場が止まり、GCによる分析も落ち着くタイミングにあわせて、「OpenLabネットワークシステム」の導入作業を行いました。この期間にネットワークの工事から、機器の設置やソフトウェアの設定、ユーザーへの教育など、すべてを終わらせなければなりません。遅れは許されないため、数か月にわたって綿密に打ち合わせを行ってきました。一部、非常に古いCDSからのメソッドの移行には手間取ったものの、予定どおり、2020年4月に二十数台のGCがネットワークに接続された新システムが稼働しました。

1か所に集約したパソコンで、すべてのGCにアクセス

制御用のパソコンは、ラボ内の1つのデスクに集約しました。同じパソコンからすべてのGCにアクセスできるので、以前のようにデータ解析やデータ再解析のために、それぞれのGCまで移動する必要がなくなりました。また、「ネットワークにつながったことで、作業効率も上がりましたし、メソッドの移行も楽になりました。」(山下氏)と、ネットワーク化のメリットを感じていると言います。ネットワーク化したことで、他部署とのデータ共有も楽になりました。「製品分析では、普段は出ないピークが出ていないか注目しています。そのようなデータは、従来はUSBメモリなどを使って他の課に渡していましたが、今はネットワーク上で簡単に見ることができますので、非常にやりやすくなりました。いろいろなデータを見られるので、ミスがあればそれも分かってしまいます。人に見られているという緊張感はありますね」(細川氏)と言います。副次的な効果として、分析業務の精度や技術の向上にもつながっているのかもしれません。

導入前は、Windows XP上のEZChrom Elite、Windows 7上のOpenLab CDS EZChrom Edition、Windows 10上のOpenLab CDS 2など、複数のCDSが混在していましたが、導入後は、すべてのGCを同じバージョンの「OpenLab CDS 2」で制御できるようになりました。「すべて同じソフトウェアで操作できるので、使い勝手がよくなりました」(菊池氏)と言います。導入当初こそ、新しいソフトウェアに慣れず、「使い慣れたものの方がよかった」という声はあったものの、時間が経つにつれ、そのような声はなくなっていきました。

 

1か所に集められたパソコン(手前)で、40台ものアジレントのGCを制御できるようになった

 

今後の展開

現在。ネットワークに接続されているアジレントのGCは、かつての主力モデルだった「Agilent 6850」から、最新の「Agilent 8890 GC」を含め、40台まで増えていますが、それでも問題なく「OpenLabネットワークシステム」で管理できていると言います。品質管理課では、高純度溶剤の微量金属分析用として、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析計)やトリプル四重極ICP-MSを活用しています。また、各種成分の分析用としてLC(液体クロマトグラフ)も使用しています。当初は、圧倒的に台数が多く、使用頻度が高いGCをネットワークに接続しましたが、今後はICP-MSやLCもネットワークにつなぐ可能性もあると言います。

 

取材に協力してくださったKHネオケム株式会社 品質保証部 品質管理課の皆さん

 

 

 

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