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貴金属のリサイクル技術で世界をリードする ~田中貴金属工業株式会社~ (1/3)

2016年9月23日

円高になると俄然注目されるのが、安定した資産としての金への投資。金は古来より資産価値のある貴金属として重宝されてきました。この金を初めとする貴金属がコンピューターなどの先端産業でも注目されるようになったのは、「産業の米」と呼ばれる半導体に「金」のボンディングワイヤー(極細線)が使われるようになったことも大きな要因です。このボンディングワイヤーで世界トップシェアを誇る田中貴金属工業株式会社湘南工場を訪ねました。

スクラップからの貴金属回収で
顧客のコストダウンに貢献

田中貴金属工業の主要なビジネスは産業用貴金属製品の製造・販売。

田中貴金属工業株式会社は、1885年(明治18年)に貴金属を扱う両替商として創業しました。1889年には日本で初めて電球用の白金フィラメントの工業化に成功。それ以来、両替商から金の地金商、そして貴金属を使用した工業用製品を生産する企業へと転身し発展してきました。昭和の時代には通信機用接点、クロスバー型電話交換機接点、そして半導体製造になくてはならないボンディングワイヤーを製造、そして最近は自動車用センサー、排ガス浄化用触媒、燃料電池用触媒、LED用サファイア基板製造用るつぼなど、環境浄化やエネルギー関連の製品にも進出しています。産業用に使用される貴金属は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の貴金属8元素で、産業用貴金属の製造・販売の規模は、同社の約70%を占める主要な事業となっています。  

今回取材させていただいた湘南工場は、貴金属を市場から回収し、リサイクルすることをメインにした工場です。化学回収カンパニー 湘南工場 分析セクション マネージャーの中庭寿さんと土谷剛照さんにお話をうかがいました。  

田中貴金属工業株式会社
化学回収カンパニー
湘南工場分析セクション マネージャー
中庭寿さん

「湘南工場の業務は、お客様からメッキの廃液などの液体、廃材や回収した製品などの固体系スクラップのサンプルをお預かりし、それを分析して貴金属の含有量などをご報告し、承認いただければ買い取りをさせていただきます。買い取り以外の方法としては、再生品化した地金返品という方法をとることもあります。これら2つの方法によってお客様のコスト低減に寄与させていただいております」(中庭さん)

田中貴金属グループでは、地金調達から加工・製造、販売、リサイクルまでを一貫して行っているため、持ち込まれたサンプルの分析が終了した時点で買い取りをすることができ、短時間での決済ができるのが最大のメリットです。  

大量に廃棄される家電製品や情報端末などの中には、貴金属やレアメタルなどが含まれており、これらを回収してリサイクルし、資源の有効活用に役立てようという動きは「都市鉱山」などと呼ばれ、資源の有効利用として注目されています。スクラップから貴金属を回収し、再び製品に利用することで、大きな利益を生むことができるだけでなく、地球環境の保護に役立つとともに、資源の少ない日本の「国産資源」として経済にも貢献することができることになります。  

貴金属のリサイクルで重要なのは、正確かつ迅速に貴金属含有率を分析する能力です。正確な分析能力こそがリサイクルで利益を生み出すためのカギとなるからです。中庭さん、土谷さんは、「さまざまな素材中の貴金属含有率分析のノウハウと技術の蓄積はあります」と語ってくれました。  

田中貴金属工業の湘南工場では、さまざまな廃液やスクラップから金や銀を取り出し、高純度(99.99%=フォー・ナイン)の地金を作る技術力があります。

地金調達、加工・製造、販売、リサイクルまでを一貫して行っているのが田中貴金属工業の強み。

 

また、田中貴金属グループは、世界でもっとも権威のあるロンドン貴金属市場協会(LBMA)、およびロンドン白金&パラジウム市場(LPPM)からアジアで唯一の公認審査会社(Good Delivery Referee)として任命、プラチナ、金、銀、パラジウムの分析技術に関し、日本で初めてISO/IEC17025を取得しており、その技術力は国際的にも高い評価を得ています。